夏になると、野生のオルカが鮭を追ってたくさん集まってくる、カナダ、BC州のジョンストン海峡。その中でも、オルカが特に頻繁に通過するハンソン島から、毎日の生活とオルカの様子を、日本の皆さんにお届けします!

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9月11日

 前日の夜ほとんど眠れなかったので、今日はしっかり寝ようとゆみちゃんにエンドボイスを任せて10時台に寝袋に入ったのに、スピーカーから聞こえてきた音で目が覚めたのは午前12時半だった。
 スピーカーやヘッドフォンからは、ほとんど聴いたことのないこの音。でも、鯨類が好きな人なら誰もが知っているであろう、この不思議な美しい音色。
 ザトウクジラの「歌」だ!!

 ここ数日間からはとても考えられない素早い動きで、私は階下に飛び降りた。そして一刻も早く録音を始めようとDATの電源を入れる。うーっ、こんな時に限ってDATが「クリーニング」表示を出す…もーっ早く早く早く~!!ザトウクジラがこの海域で歌うことなんて、ほとんどないんだから!!

 ようやく録音開始、ノイズ除去のためにFI以外の全ての水中マイクをシステムから外す。音量を調節、ログブックに時刻を書き込み、ヘレナに知らせようとラボの外へ飛び出ようとすると、ちょうどヘレナが起きてメインハウスからダッシュでやってきたところだった。スピーカーからはまだ流れるザトウクジラの歌、美しい旋律。
「凄い,凄い!!」私たちは大興奮しながらラボへ入った。冷たい北の海、ブラックフィッシュ・サウンドでその大きなクジラは歌っていた。
 ザトウクジラのオスはふつう、繁殖シーズンに暖かい海で歌う。メスの気を引くために歌うのだと言われている。季節も場所もかけ離れたこの海で、こんなにも強く美しい歌を歌わなければならなかったのはなぜ?
 場所とか海の温度とかシーズンとか、そんな条件は全く関係なく、今、どうしてもここで歌わなければならなかった。彼の価値観を根底から覆すくらいの衝撃的な女性との出会いが、そこにあった…のかもしれない。
 (^ω^*)

 録音を2時すぎに止めて寝袋に戻ったが、1時間後むくっと起き上がらなければならなかった。今度は激しく不機嫌な私、コールの主はA30sだ…朝にはナイアッドでの冒険が控えているっていうのに。なぜこのタイミングなのか。ため息をつきながら1階に降り、ため息をつきながら録音スタート、またため息をつきながらログブックを書いていると、モモちゃんが「録音しようか?」と声をかけて来た。
…いつもいたずらされてるのに、一瞬、天使に見えた。
 A30sは私たちをこき使った。ゆみちゃんが交代して録音を止めたのは午前6時をまわっていた。

「ナイアッドが迎えに来るから起きて~!!」
午前9時半、私はほとんど寝ていなくて潰れているモモちゃんとゆみちゃんを叩き起こした。どんな目覚ましよりも効果的なこのひと言に、まだ血圧の低い2人ももぞもぞと起き出す。
 ブラックニー・パスはいちめんの霧。もー真っ白。寒いだろうからダウンジャケットを着て、IDブックと双眼鏡の入ったリュックを背負い「あ、毛糸のぼうし…」と思って、何も考えずにラボにあった「ORCA」と「LAB」のぼうしの「ORCA」のほうをかぶって外に出ると、ヘレナがそれを見てキャーと悲鳴をあげ「オルカライブのオーディエンスが乗ってるのよ!写真撮られるわよ?待って、違う帽子を取って来てあげるわ」と言って、メインハウスから可愛いニット帽を持って来てくれた。
 オルカライブの英語版の方の視聴者たちは年に1回、ナイアッドに乗って実際にオルカを見て回っている。そして最終日にラボ見学に訪れる。まあラボ見学のほうはいいととして、すでにナイアッドに乗ってるのか…ラボのアシスタントはアホだと思われたら大変だから気をつけよう。

 潮は低かったので私たちはいったんジューン・コーブに乗り、沖に止まったナイアッド・エクスプローラへ送られた。私たちは船長・ビルの息子タイソンに「ヘーイ!!やっと来たな」と引き上げられ、ナイアッドに乗り移った。すでに満員と言ってもいいほどの混み具合だった。私たちは乗客に「オルカラボから来たの?」と大歓迎で迎え入れられた。ボートは真っ白な霧の中を進みはじめた。
 A30sは北のブラックフイッシュ・サウンドを横切っていた。最初に私たちの視界に入ったのはA39だった。

「ほら、あれを見るんだ!ドーサルフィン、つまり背びれだ。素晴らしい」
ビルがボートを停め、操縦席から出て来て乗客に説明…する。私は時間と場所を確認して、紙に書き込んだ。そう、ボートに乗ったとしてもやはり仕事は仕事。少しでも詳しい監視データをヘレナに届けなければならない。
 残りのA30sはウェイントン・パスの方へと向かったようだった。A39は少し鳴くと、方向を変え、家族のもとへと向かって行った。

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 ナイアッドは霧の中、ウェイントン・パスの小さな島々の間を抜ける。ジョンストン海峡へ出ると、視界はずいぶん良くなった。A39とA54sはハンソン島側に進み、A38、A30、A50sはバンクーバー島側に渡って、東へと進んだ。双眼鏡で個体識別をしながら、状況を事細かに書き込んでいると、タイソンが私たちの前に現れてこう言った。
「ヘイ、ガールズ、腹はちゃんと減ってるかい?」

 オルカを見ながらのランチ・タイム。こんな幸せな時間があっていいのだろうか。特に、タウンランを前にしてほとんど食料のつきていた私たちには、涙が出るほどありがたいものだった。キッチンに入ったタイソンから、暖かいスープとおいしいパンがトレーに乗せられ、差し出された。モモちゃんとゆみちゃんはあっと言う間に完食し、おかわりのためにタイソンのもとへ戻った。
「おおっと~?しばらくものを食べていなかったかのような食べっぷりだなぁ」
再びスープが注がれる。パンも食べるのかと聞かれ、2人が「うん」と迷わず答えるのが聞こえた。私がおかわりをしに行くと、聞かれるまでもなくパンが添えられた。

 霧の晴れたジョンストン海峡は美しかった。ほんのちょっと角を曲がったところにあるのに、普段、聞いて想像することしかできない海の姿。豊かな緑色の海岸。オルカたちの息吹き。

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 ビルはボートを停め、IDブックを手に取って、面白可笑しく、わかりやすく、絶えず皆の注意を引きながら、この海峡のこと、オルカたちのこと、研究者の功績について説明した。皆は腹を抱えて笑い、そして感心し、目の前の海を泳いで行くオルカたちを見つめていた。
 この海峡に、生きている強い生命。

「ガールズ、さあ操縦席へ入るんだ!」
ビルに招かれて私たち3人は操縦席へ入った。ナイアッドにおいていちばん見晴らしのいいその場所は、船長の特等席。ザトウクジラやトドの群れに手を振りつつ、まだ霧の残る海峡をナイアッド・エクスプローラは走って行った。オルカたちのために考案されたその特殊な構造で、この美しいジョンストン海峡に、ほとんどボートノイズを響かせることなく。

 私たちは16日にハンソン島を出ることになっていた。だからナイアッドから見るこのジョンストン海峡のこの風景を、強く目に焼き付けておかなければならなかった。最高の船長と乗組員を乗せたナイアッド・エクスプローラは、私たちを最愛の場所、ポールとヘレナが待つオルカラボへ送り届けるため、ブラックニー・パスへと向かって行った。

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2007-09-17 : 未分類 : コメント : 11 : トラックバック : 1
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9月10日

ヘレナのりんごの木、今年は鈴なり
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 全米オープンも終了し(フェデラー優勝おめでとう)、平穏な日々が戻って来た。
 私たちの心は依然として不思議なきのこ(9月6日の日記参照)に奪われっぱなしだ。ヘレナに「ベニタングタケは毒きのこよ」と言われ、私たちはネットで検索した。すると「毒きのこだが、毒性が弱いので死に至ることは少なく、4時間ほど大暴れし、嘔吐して、寝てしまう。すばらしく旨い」と書いてあり、私とモモちゃんは目を見合わせて、そして一緒にゆみちゃんの方を見た。
「いや、だめだから!毒きのこだから!死に至ることは『少ない』って書いてあるだけでしょ!体調とか個人差もあるでしょ!」ゆみちゃんは空気を読んで猛反対。

 ヒデさんと一緒に焼酎をストレートでひと瓶あけてひっくり返り、テントまで運ばれたのに、どうしてこんな狭い空間に閉じ込められなければならないのかわからず「寝ないよ、寝ないよ!!」とまりりんと戦った前科のある私。そして飲み過ぎでぶっ倒れて「大丈夫ですか」と聞かれて「ビール下さい」と答えた前科のあるモモちゃん。

 私たちは楽しく大暴れし、吐いてぶっ倒れてぐーぐー寝ることが非常に魅力的に思えたが、ゆみちゃんが「毒きのこは本当に何があるかわからないからやめて…」と懇願するので、泣く泣くあきらめなければならなかった。
 ゆみちゃんって、ほんとお母さん役。彼女がいなかったら私たちは無事にここまで過ごせたかどうか、わからない。

つめをケガしてばんそうこうを巻いてもらったリオ
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 昨日、ジーナの友人夫妻がビジターとして訪れ、同時に今年のイーグルズ・アイの個体識別担当者で、生態保護区監視員のモリーさんも、数日をハンソン島で過ごすためにやってきた。そして今日、大工さんのカートがお兄さんとその娘アネッサ(04年のアシスタント)を連れて来て、ハンソン島はとてもにぎやかになった。
 しかし、今日もジョンストン海峡にいるオルカはA30sのみ、しかもあまりコールを出さずに保護区東をうろうろするだけ。
 オルカラボの前にはザトウクジラが2頭、チャンキー(BCX0081)とストライプ(BCZ0004)だ。ケルプの沖にいる4~5頭のトドのうちの1頭が大きな魚を捕まえた。

みんなを千年杉まで案内した。
全てを知ってるかのように佇むグランドマザー・シダー
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 ディナー前、ブラックニー・パスは薄い霧がかかっていた。100頭のカマイルカがオルカラボの前に現れ、宙を舞いつつ、北へと向かった。すると、何故かそこに2頭のザトウクジラも加わった。さらに、5頭のトドまでもが行列に参加しているではないか。いったい何が起こっているんだろう?海洋生物の大行進だ。
 メインコーブには、いつやってきたのだろうか、海に還したあの子を彷彿させるような赤ちゃんアザラシが泳ぎ回っている。
 絶景。

 私はゆみちゃんにいったんレコーディングを任せて、トイレへ。ゆみちゃんはヘッドフォンをつけながらスキャニングを進める。ディナーの準備を終えたヘレナが、長電話のあと、キッチンでこっそりモモちゃんを呼んだ。

 モモちゃんはガッツポーズしながらメインハウスを飛び出し、ラボへ向かった。そこでトイレから戻って来た私と合流。あまりもの彼女の興奮に「どうしたの」と尋ねてみたが「ゆみちゃんも揃ってからじゃないと言えない」の一点張り。
 くつを脱ぎ捨て、急いでラボ内に入る。

「グッドニュースがあります」
モモちゃんが、私たちを前にして改まって言った。
「明日11時に、ナイアッドが私たちを迎えに来るんだって」

 …はて。どういうことだろう。私たちの頭の上に、またしてもぼよぼよとクエスチョンマークが浮かぶ。ウオッチングボートのナイアッドが迎えに来るって…だってまだ、私たち帰らないでしょ?まさか、ボートの都合とかで、今夜かぎりで追い出されちゃうのか?

 静まり返るゆみちゃんと私に、今度はモモちゃんの方がびっくりした。
モモちゃん「え?なんで喜ばないの?」
わたし「え…私ら、もうここを出てかなきゃならないの?」
モモちゃんはようやく私たちの心配を理解した。そして、満面の笑みで、こう言った。
「明日1日、私たちを海に連れて行くため!!これは、ビルからの提案だって」

び、ビル━━━━━。゚(゚´Д`゚)゚。━━━━━っっ!!!!!!

 忘れもしない6月29日、小さな島に置き去りにした3人のジャパニーズガールが、ナイアッド・エクスプローラが通過するたびに何度も何度も狂ったように手を振るのを、ビルと息子のタイソンはずっと不憫に思っていたらしい。実際、私たちは手を振るたびに「ビル~!タイソン~!私も海に連れてって~!!」と内心叫んでいたのだが…この特別な海域では風に乗って気持ちまでもが届いてしまうものなのか?
 船長・ビルは「オーケー、島から手を振るのはもうおしまいだ。お前らさっさと船に乗れ!!」と考えた。そして、わざわざヘレナに「君のところのガールズを明日1日、冒険へ連れ出してもいいかい?」と電話して交渉してくれた。

 思いがけない、突然の、そして最上級のプレゼントだった。私たちは愛すべき陽気なキャプテン・ビルに海に連れ出されることになった。
 ナイアッド・ゴー!!
2007-09-13 : 未分類 : コメント : 1 : トラックバック : 0
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9月8日

 ヘレナ曰く「スキャニング・クィーン」ゆみちゃんのおかげで、去年から取り組んでいた20年分のログブックのスキャニングが終わろうとしている。ログにしても、テープにしても、ポールはアナログが大好き。今まで何度も「ログはパソコンで打てばいいじゃないか」とか、「テープはやめてCDに録音すれば」と言われて来たのだが、デジタルのデータはちょっとした事故で一瞬にして全てが消えてしまうが、テープなら、1カ所が切れても他の部分は聞ける、ログブックもたとえ1ページが破れてもあとは残るという理由で、ずっと手書きのログを続けて来た。
 しかし、ポールとヘレナは、自分たちの年齢を考えたとき、この30年分の膨大なデータ(ログブックを書く形式になったのは20年前から)を自分たちの研究のためだけではなく、後の研究者が好きな時に好きな研究目的に合わせてデータを閲覧できるよう、公開したほうがオルカたちのためにもなると考えた。ビクトリア大学と子ポールの協力もあってデジタル化プロジェクトは順調に進み、ログブックはすでに今年のものを除いてほとんどがPDFファイル化されている。あとは、膨大なアナログテープだけだ。

 ゆみちゃんがラボ内で地道に活躍している間、モモちゃんもメインハウス裏のデッキで人知れず大活躍していた。彼女は、まき割りクィーンとして名をあげるため他の誰にもまき割りをさせず、今日も斧を天高く振り上げていた。

 晴天、北風!!

 今日、ヘレナの手によってサウナが焚かれていることを知った私たちは、ある重大なプロジェクトを決行しようとしてた。
 海は満ち潮、雲ひとつない青空、そして暖かいサウナ。温度計を見ると…うーん、気温は11℃だ。でもそんなことくらいでくじけていられない。愛するF.I.Bのアルバムも発売され、阪神がついに首位に立った。今日は、私たちが海に決死のダイブをする日!!

 私とモモちゃんはTシャツとスパッツに着替え、ぶるぶる震えながら一生懸命ゆみちゃんを誘ったが、ゆみちゃんは「私が写真撮らなかったら誰が撮るの」と断固として拒否した。iPodでThe Very Best of PIZZA OF DEATHを聞くと、心の奥から沸き上がって来る何かが私を海へと駆り立てた。iPodをゆみちゃんに押しつけ、私は「パンクローーーーーーーック!!」と叫びながら海へと飛んだ。あ、ウォッチング船ルークワが見てる…。

 ゆみちゃんが爆笑しながら写真を撮る。モモちゃんは直前に音楽を聴いて熱くなるわけでも何でもなく、思い出作りのために素で入るので、まるでお風呂に浸かるかのように5℃の海水の中でしゃがみ、「うう…」とうめき声を上げていた。500メートル沖には、2頭のザトウクジラの大きな潮吹き。

バンジャ━━\(´∀`●)/━━ィ!!
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ちなみに、さして気温の変わらない昨日はこんな格好でも寒かったのでした
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 私とモモちゃんはやり遂げると大きなタオルをかぶり、暖かいサウナへ走った。ヘレナのおいしいご飯をたっぷり食べて脂肪がついていたのが良かったのだろうか、私たちは生還した。オルカたちはいつもこんな冷たい海泳いでるんだなあ…。凄い…。

 熱いシャワーを浴びてラボに戻ろうとすると、ティムさんが荷物を海岸に並べているのが見えた。今日からCPへ島流しだ。ヘレナの甥っ子とはいえ、オルカがいないこの寒い時期に、発電機もない(ソーラーパネルはあります)あそこにひとりぼっちとは…むごい…。
 ティムさんを見送り、私たちはヘレナと一緒に流木の山を整理整頓して午後を過ごした。オルカたちの情報は全く入ってこなかった。東にいるであろうA30sはともかく、私たちの大好きなA12sはどこへ行ったのだろう。CRPTの水中マイクが壊れている間に、どこかへ行ってしまったのか…。

 メインハウスでのディナーはなかったので、私たちはスパゲティを茹でて食べた。明日からビジターが3人来ることになったので、私たち3人だけでゲストハウスを広々と使うごはんは今日でおしまい。名残惜しく、みんなそれぞれマットに寝そべって、しばらくぐうたらして、サウナが熱いことを思い出し、3人仲良くサウナに移動して、ダラダラ汗をかきながら1時間ほどキャッキャ喋り続けた。イルカが水中マイクの近くで鳴いていた。
 今日も一面の星空。私たちは寝袋に入り、目を閉じたが、室内からでも聞こえるほど大きなザトウクジラの呼吸音が、延々とブラックニー・パスに響いていた。
2007-09-11 : 未分類 : コメント : 1 : トラックバック : 0
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9月7日

 午前4時前、私は枕元のスピーカーからひっきりなしに聞こえるカマイルカの声を、どうにかして無視して寝ようと頑張っていた。
 イルカの声はデータとして扱っていないからオルカラボでは録音しない。私がもっとまじめだったら、ラボにおりてどこの水中マイクか確認するべきだったのだろうが、身体が動かずそれはできなかった。朝になって何も書いていないログブックを見て「私も起きようと思ったんだけど無理だったわ」とヘレナは笑っていた。

 午前8時、A30sが東から戻って来た。オルカたちのお祭りは終わり、ほとんどの群れがジョンストン海峡を去って、彼らもリラックスモードだ。自分たちだけの海峡を広々と使って、時折お互いを呼び合い、魚を食べてゆったりと過ごしている。
 A30sはCP~ブラックニー・パスの入り口沖で3時間ほどだらだらと時間を過ごすと、満足したのか、東へと向かった。

 今日、ヘレナの甥っ子で、ビクトリア大学で子ポールのクラスメートでもあるティムさんがやって来た。鯨類について詳しいうえにダイビングもこなす、サングラスの似合う背の高いナイスガイだけど、今夜ひと晩だけハンソン島に泊まって、明日からCP送りらしい。
 私が遅いランチから戻って来ると、録音していたゆみちゃんが「4頭のオルカが北からこっちへ向かってるって、ポールが言ってたよ」と教えてくれた。4頭…。空を見るが、ばってんは出ていない。誰だろう、今さら戻って来る4頭の群れって…。
 うーん、うーんと2人で考えていると、そこにヘレナが入って来た。
「40頭のオルカがこっちへ向かっているから、FIの水中マイクの音量を上げなさい。まだ誰も個体識別できていないの、だからトモコしっかり聴いてね」
ヘレナはそう言って音量をぐんと上げ、ラボを後にした。私とゆみちゃんは顔を見合わせた。えっと…今、40って言ったよね???

 しばらくすると、FIの水中マイクから謎オルカのコールが聞こえて来た。すごく遠いし、豪華客船のボートノイズがうるさすぎてはっきりとは聞こえなかったが、とてもじゃないがノーザン・レジデントのコールとは思えなかった。記憶をたどる。今シーズンはじめに聴いたサザン・レジデントとも違うし…。これって…まさか…オ、フ、ショア…?

 ヘレナが再びラボに飛び込んで来た。
「スタッブス・アイランド・ホエールウオッチングのジムが背びれ下部に傷のあるオスを見つけたの。レジデントの誰にも該当しないらしいわ。それで彼は、この群れがオフショアなんじゃないかと考えて…」

 おーっと大正解Σ(゚口゚;!!オフショアがこんなシーズンにやってきた!!

 私はすでにコールが聞こえていることをヘレナに説明し、ヘッドフォンをつけてもらった。まだまだ遠いけど、コールの主は間違いなくオフショアだった。

 オフショアは、魚を食べるレジデントでも、ほ乳類を食べるトランジェントでもない、第3のオルカたち。存在が確認されたのも非常に遅く、研究もたったの15年しかされていない。レジデントやトランジェントに比べて、まだまだ生態のわかっていない謎めいた群れだ。
 ここの海域にも訪れることはあるが、夏のレジデントが多い時期はオフショアたちもめったに近づかないので、アシスタント9年目の私にとって初めての遭遇!!

 彼らがブラックニー・パスに向かっているという報告を受けたので、私たちは急いでデッキにスコープを並べた。夕方になると日が傾いて、気温も10℃以下に下がる。ティムさんが私たちのかわりに凍えるようなデッキで監視をしてくれた。
 オフショアたちはひっきりなしにコールを出していたが、ジョンストン海峡でそのコールを聴いているはずのA30sはずいぶん落ち着いていた。彼らはロブソンバイトで魚を獲り、レスティングコールを出して、東へと進んでいった。
 午後5時19分、オフショアたちは次々とブラックニー・パスに現れた。彼らは海峡中央を泳いでいて、ラボからの距離は約1キロと遠かったが、私たちはその数にびっくりした。40頭と聞いていたけど…軽く50頭はいるんじゃないか?

調査のため個体識別用の写真を撮るジェレッドとオフショア
(IDカタログを編集している人のひとりです)
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 凍えそうな気温の中、私たちは全員デッキに出て、スコープについた。潮はかなりの勢いで引いていて、それに逆らって泳ぐオフショアたちはとっても泳ぎにくそうに見えた。
 5分の1くらい進んだとき、とうとうオフショアたちは音を上げて凄い勢いで北へ戻り出した。それを見た私たちが「あぁ…」とため息をつくと、彼らは突然止まり、また潮に逆らって南へ向かい出した。

 ん~(´・ω・`;)???

 オフショアたちは5分の1進み、また凄い勢いで北に戻り、また方向を変えて潮に逆らってゆっくり5分の1進む…という不思議な行動を何度も繰り返した。めずらしさで浮かれていた私たちも、だんだん寒さが現実として身にしみて来た。うう、つらい…。
 もちろん、オルカたちにとっては私たちが寒いかどうかなんて全く関係のないことだ。信じられないくらいゆっくり進みながら、身体を横にしたり、尾びれを宙高くあげたりして、なんかムダなことをしているように見える。

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 そういや以前、ウオッチング船ナイアッド・エクスプローラのビルとドナ夫妻の家に泊まったとき「オフショアはみんな尾びれを宙につき上げて、風に吹かれて前へ進むんだ」と教えてもらったけど、陽気でいつもノリノリのビルが言うことだから、オフショアを実際見たことのない私は「半分ネタだろうな」とずっと考えていた。オフショアのコールが聞こえて来た時点でモモちゃんとゆみちゃんに話しても「へぇ~そうなんだぁ凄いね(笑)」と案の定本気にしてもらえなかったのだが…。

え~本当にやってる!!Σ(゚Д゚ノ)ノ
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 もちろんこんな小さな帆で思うように前に進めるわけもなく、3時間後、とうとう完全に潮に敗北したオフショアたちは、2度と振り返ることなく北へと戻っていった。
 うーん、何だったんだろう…。

 でも、これで私たちの思い出に「オフショア」という言葉が刻まれた。サザン・レジデントも見たし、スーパーポッドもあったし、ザトウクジラの全身が宙に舞うところも見たし、オルカとの超近距離遭遇もあった。ヘレナのレモンメレンゲ・パイも食べた。今年思い残すことがあるとすれば…

「もういちどA12sに会いたいよね」
私たち3人の意見は不思議と一致した。

 今日のディナーはサーモン、そしてデザートはヘレナのガーデンで穫れたりんごを使用したアップルクリスプだった。美味しかった。寒さに負けずにがんばって良かったと思った。
 星が瞬いていた。オーロラの出現を期待したが、自己主張の強い星たちは今夜も緑色のカーテンごときに主役の座を譲ってくれそうになかった。
2007-09-10 : 未分類 : コメント : 3 : トラックバック : 0
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9月6日

不思議なきのこを食べると…
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なめくじも、このサイズに!!
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 上のきのこ(ベニテングダケさん)は「カートの作品」ではなく、れっきとした自然の産物です。
 天気は少々回復したらしく、CRPTの水中マイクがソーラーパネルで復旧した。ヘレナと一緒におそるおそるスイッチを入れる…おお、ガサガサがうんと減っている。
 CRPTの復旧とともに、オルカたちの情報が入って来た。レジデントのオルカは目撃されていないが、そのかわりにみんなが大好きなトランジェントのT14がウェイントン・パスに出現。ジョンストン海峡にいたT41、T44そしてT37sと合流し、西へと向かって行った。レジデントがいない日は、トランジェントのオルカが出没しやすい。やはり彼らも、レジデントが留守の日を狙っているのだろうか。

 9月。気候も悪くなり、気温も下がって、屋根しかないキャンプキッチンでの食事はとってもミゼラブルになってきたので、ゲストハウスのキッチンが解放され、私たちはノーディナーの日でも室内でごはんが食べられるようになった。
 食べ物を入れるためのクーラーボックスを全てゲストハウスに運び、中の野菜やパンなどを戸棚に移し、合計8個のクーラーをぴかぴかに洗ってデッキに干した。天気がいい日にものを洗うのはちょっといい気分。水は、晴れようが晴れまいが、冷たいままだけど。

 ポールはCRPTの水中マイクのバッテリーをひとりで交換しにいき、おかげでCRPTは完全に復旧し、ガサガサ音はぴたりと止まった。オルカの幅広い動きも完全にカバーできる。そして私たちの録音時間も増える!

 ゲストハウスでランチを食べていると、青いセイルボートが視界に入って来た。おお、カートのボートだ。そういやカートは車を新調するため、1週間ほど前からハンソン島を留守にしていた。カートの現在の車はもの凄い代物だ。元の塗装は全てはがれ落ち、ペンキで緑色に塗られ、足回りはサビで溶けかけ、車内の故障は木材で補修されている。カートはまだまだ乗りたいらしいのだが、車自体はもう限界で、おまわりさんに止められてしまうらしい。
 似合ってたんだけどなぁ。
 カートがお友達を連れて来たので、明日はメインハウスで食事が取れることになった。今日のディナーは、昨日のトマトスープの残りにごはんを入れたリゾット。ゆみちゃんの力作!

 ところで今日、私の敬愛する、あるギタリストさんのコラムが更新されていた。それを読んで私はとても驚き、そして胸が熱くなった。彼は、自分の家庭では買い物の時にマイバッグを持って行き、外食時にはマイ箸を持参し、コーヒーショップに行く時はマイカップを持参する。ささやかだが将来息子が生きる地球のために、無理のない、続けられる範囲でできることをしているそうだ。
地球のためと言うと大き過ぎて実感しにくいが、せめて愛する人のためになら少しでも実践できるんじゃないか?子供でも家族でも恋人でも片想いの相手でもペットのためでも。
それでも、できることすらしない奴はめぐりめぐって罰でも当たれと。おおまかにはこういう感じだけど、実際読んでもらったほうが彼の考えがはっきりわかると思う。「この文がほんの何人かの意識改革の手助けになれれば嬉しい」という言葉で締めてあった。
 
 オルカラボで働くようになってから、ずっと考えて来たこと。
「自然を守れとただ言っても、多くの人にはその繋がりが見えないから、ぴんと来ない。だから私は、たくさんの人に野生のオルカのことを知ってもらい、オルカのことを好きになってもらって、『大好きなオルカが暮らしている海を、そして地球を守りたい…』と考えてもらう手助けができれば」
 それが自分にできることだと思った。私は試行錯誤した。本の出版やオルカライブ、ブログ、講演、雑誌など…。時には少しでも伝わっていることを実感できたり、時には「こんなことに目を向けてほしいんじゃないのに」と空回りしたり、自分ひとりの力ではとうてい変えられないことを目の当たりにして、苦しんだ。
 でもその間に私の「神様」は、私がひとりでも多くの人に伝えたかったことと全く同じことを、公の場でこんなにもかっこよくさらりと言ってくれた。パンクロッカーで、日本を代表するギターヒーローの横山健が!!

 このことがどれだけ私を元気づけて、後押ししてくれたかわからない。どんなに悩んでも自分の信じた道、今まで歩いた道をまっすぐ進もうと思った。オルカを通して、人々に自然への関心を抱いてもらう道を。PIZZA OF DEATHを好きで良かった。この音を聴きながら、私は前へと進む。
 そして健サマ、F.I.Bに出逢わせてくれてどうもありがとう。

PIZZA OF DEATH RECORDS
画面左の「SHIT」から「KEN'S COLOMN」へ
2007-09-08 : 未分類 : コメント : 3 : トラックバック : 0
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9月5日

 前日のディナー後、メインハウスに集合させられ、小さなテレビで「ナダル対フェレール」を観戦されられて、ナダルを応援していた夫妻の悲鳴に恐怖でプルプル震えながら後片付けをしていると、メインハウスのスキャナからコールが聞こえて来た…しかしこれは、G17sでしょ?

 急いでラボに向かい、録音スタート。先頭で戻って来たということは、G17sも昨日すでに来ていたらしい。その数日前からI15sがひっきりなしにGポッドコールの真似をしていて、まぎらわしかったのはともかく、G17sも、姉家族のG25sのほうだけ来たのであれば、特徴の少ない背びれがたった4頭、あの100頭以上の群れにまぎれてしまって見つけにくいのは無理はない。
 後にスーパーポッド時の録音をヘレナと共に聞き返してみたが、I15sの真似ではなく、完全にG17sのものと思われるコールは、数時間のうちたった数個しか見つからなかった。

 オルカたちは午前3時までかかって北西へと向かった。RsとI11sはウェイントン・パスを通り、A36sとI15sはずいぶん遅れていたので、近道してブラックニー・パスを通った。私は午前4時前に録音を止め、眠ろうとしたが、その時にはもう、CRPTの水中マイクに異常が起きていた。

 朝になると、ひどい天気のせいかCRPtは完全にダウン。バッテリーが切れたらしい。晴れればソーラーバネルがあるから日中は戻るだろうけど、この雨ではどうしようもない。
 9月に入ってからとても天気が悪く、そして冷え込んで来た。

こないだの嵐のときはゲストハウスが流されそうに…
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 I33sは午前10時前に東から戻って来て、西へと進んでいった。午後にはA4sとA5sも東から出て来て、そのうちのA35sだけがオルカラボの前を通過して北へと向かって行った。

 降りしきる雨の中、モモちゃんがびしょ濡れになりながらサウナを焚いてくれた。燃料にする流木も乾いたものがなくて、火をキープし続けることすら困難だったらしい。普段は2時間も焚いていればサウナは暖かくなり、内部のタンクで暖まったお湯でシャワーも浴びられるのに、今日は7時間もかかってしまった。

 今日はメインハウスでのディナーではなかったので、ゆみちゃんが夕飯に暖かいトマトスープを作ってくれた。ヘレナ最愛のテニスプレーヤー、ロジャー・フェデラーの試合をネットのライブで見つつ(夫妻のごきげんもわかるし、いつ邪魔したらいけないのかわかるし、CMに入ったらラボに来るとわかるので果てしなく便利…。)、私たちは録音を続けた。「そんなボールも見えない小さい画面で見ていないで、いつでもテレビを見にきなさい」と言われたが、ボールがネットに当たったりするとヘレナが床をドンドン叩いてリオがびくっとするので、怖くて行けなかった。
 でもよく考えたら、自分も野球見ている時はリビングでメガホンを叩きまくって、犬が自分のケージのすみっこで震えているのだから(ごめん)、スポーツにはまっている人はどこでも同じようなものなのだろう…。

 フェデラーは無事に勝利、私たちは安心して録音を止め、ベッドに入ることにした。
 天気は良くなるはずだったが、雨はなかなかやまなかった。
2007-09-08 : 未分類 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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9月3日

 昨日の段階で、オルカたちは各自それぞれ北にちょこっと顔を出し、またジョンストン海峡に帰って来ていた。何をそんなにそわそわしているのだろうか。特にA30sに至っては毎日のように北に行くものの、手ぶらで帰って来ていた。
 そんなみんなを見かねたのか、とうとうA12sが動き出した。彼らは久しぶりに東から出て来ると、黙ったままブラックニー・パスの前を通過し、誰にも知られずに北へと向かった。

 午前5時前、枕元のスピーカーの音が消え、私は起きた。どうやらボルテージが下がりすぎたらしい。発電機の電源を入れるために、懐中電灯を持って森の中へ進もうとすると、暗闇から「僕がつけるから大丈夫だよアーッハッハッ」というポールの声がした。

 寝に戻る。しばらくしてスピーカーの音も回復。そのとたんに何かが聞こえたような気がして耳をすませたが、しばらく何もなかったので目を閉じようとする。すると、ポールがラボにやってきて、DATの電源を入れる音がした。やっぱりさっきのはコールだったのか?
「ヘレナがコールを聴いたっていうんだ」
ポールは録音をスタートさせていた。私は寝袋に入るとちゅうでガサガサしていたけど、静かな空間で聴いたヘレナが言うのなら間違いない。しばらくすると、ジョンストン海峡からI15sと付き添いのA36sのコールが、そして北からはA12sのコールが聞こえて来た。…おおっと。

 誰もが、A12sは東にいるものだと思っていたのでちょっと驚く。でも、A12sは北でどでかい仕事を終え、「準備完了、あんたらも来いや」と手伝いのオルカたちを求めてやってきたのだ。A12sはジョンストン海峡の入り口でA36s、I15sと出会い、彼らを連れてウェイントン・パスを通過、北へ出た。

 そして北からは、今回は待ちに待ったWsを含んだ全てのRクランのオルカたちとI11s、I33sがジョンストン海峡へと向かっていた!!

 A30sは6月末からあんなに何度もRsを連れてこようとして、北で逃げられたり、ちっちゃい群れのみを連れて来たりしてたけど、A12sはさすが長年、仕切ってるだけのことはある。ちょろっと1日北で動いてこれだ。みんなばあちゃんが怖くて、言うことをきくしかないだけかもしれないけど…。

 スーパーポッドの群れが来る前に、オルカラボの前をトランジェントのT10グループが通過。しかも、たった2回しか呼吸をしに上がらなかった。トランジェントに生まれるって大変そうだ…。

 全てのオルカたちは例によってウェイントン・パスを通過し、ジョンストン海峡へと入った。そしてゆっくり、じっくりとこの場所を楽しむかのように4時間以上かけてコア・エリアを進み、東へと向かった。Rsはラビングに興味を示し、バンクーバー島ぞいに進んでいたが、何故か空気をまったく読めなかったI15sが(彼らはせっかく「めったに会えない友達」が来ているにもかかわらず、ロブソンバイトでもマイクを放さなかった…)興奮してラビングビーチじゅうに広がり、1時間以上にわたって自分たちのラビングを自由奔放に楽しんだため、Rsが入る余地は全くなかった。

 コールが完全に消えたのは、午後8時前。私たちも燃え尽きた…。
 ところで…

F.I.B 1st mini album "FILL IN THE BLANKS"
¥1575(税込)本日(9月5日)発売!!
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 はじめてF.I.Bのライブを見たときの衝撃は、はじめてオルカの声を聴いた時の衝撃と、とてもよく似ていた。興奮して思わず「こ、これを!!」と自分の書いたオルカの本を渡すというとっぴな行動をとってしまったが、その時にメンバーさんが、日本におけるオルカの国和歌山出身で、海を見て育ったことを知った。
 何となく縁を感じてしまうことや、曲そのものの素晴らしさ、熱狂的なライブ、メンバー全員の人柄のよさはもちろんだけど、夏の間中、遠く離れた地球の裏側の小さな無人島にいても、いまだに日本で彼らに出逢えたこと自体に深く感謝している自分がいる。オルカにしても、音楽にしても、自分が探していた「何か」に出逢えた私は、本当に幸せ者だと思う。

We love F.I.B so much.
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2007-09-05 : 未分類 : コメント : 2 : トラックバック : 0
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8月29日

 日付が変わったころ、A30sはロブソンバイトに、そしてI31sはラビングビーチにいた。I15sは…いるのにまだ鳴いていなかった。
 せっかく今夜は寝られると思った私たちは、心底がっかり。

 仕方ないので交代で録音することにし、3時近くまでゆみちゃんにやってもらい、そこから私が引き継ぎ、5時前にオルカたちがラボの前に来たのでモモちゃんを起こしてブローだけ数えてもらい、また寝に戻ってもらい、「こいつらが北に消えるまで」と思って6時半まで粘っていたら、ヘレナが「私が起きて来たんだからもう寝ていいわよ」と言って、私をいすから押しのけた。ヘレナだって疲れているのに。でも本当に眠かったのでそこはおとなしく交代してもらって2階へ。
 オルカたちもそこから20分くらいでコールをやめ、北へと向かってくれた。寝る前に私は寝袋の中でちょっと考えた。今日のI15sたちの付き添いA1ポッドは、A36sじゃなくてA30なのはどうしてだろう。奴らを北へ運ぶだけのことに、そんなに人手が欲しいのか…。

 その答えはお昼過ぎにある目撃報告として届けられた。
 A30sは、北でRsを見つけ出して、連れて来たのだ。

 1時前にコールはFIの水中マイクから聞こえて来た。Rsのいちばん大きな群れ、R5sは、どうしてもウェイントン・バスが好きなようで、オルカラボにいる私たちは、こういう場合たいてい姿を見ることはできず、ラボでひっきりなしに続くコールを聴いているだけだ。今日も、オルカたちはウェイントンに向かってしまい、ちょっとため息をついていると、今度は北からカマイルカの大群がラボの方に近づいてきた。その数なんと200頭以上!!

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 カマイルカたちは飛び上がって泳ぎ、垂直に舞い上がったり、宙をくるくる舞ったりして泳いでいた。美しい光景だった。途中、5隻ものフィッシングボートが彼らを追いまわし、私とヘレナは本気で心配して、無線でボートたちと連絡をとろうとしたが、自分の船のまわりにイルカがいるのが楽しかったらしく、なかなかやめてくれなかった。イルカたちは何度も方向を変え、ハンソン島寄り、パーソン島寄りに移動していたが、ついには北へ戻っていってしまった。

 ジョンストン海峡にはすでにA36s、A12s、A4s、A5sがいるので、今回は100頭以上のオルカが集まったことになった。前回のミニスーパーポッドとは違い、れっきとしたスーパーポッドだ。
 …しかし、Wsにも来てほしかったなぁ。A30sが今期これだけ何度も、Rsを連れてこようと必死になってかけずり回っても、Wsだけは気難しかったか。

 今回はオルカたちはスーパーポッドらしからぬ、不思議な動きをした。お客様のはずのRsはさっさと東へ向かい、I15sとI31sがそれに続いた。そしてホスト役のはずのA30sは彼らに付き添わずに、ラビングビーチまで行ったあと、西へと戻って来た。A30sはCP沖まで進み、また皆の待つ東へと進んでいった。
 お客様を放っておいて何をチェックしていたのだろう?その意味はまだ、私たちにはわからなかった。

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2007-09-05 : 未分類 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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8月28日

 久しぶりに見る、バケツひっくりかえしたみたいな雨。
 雨だけではなく風も非常に強くて、凍えそう。こんな日に島を出なければならない子ポールはかわいそうだけれど、ウオッチングボートのナイアッドに迎えに来てもらうのだから(すごくうらやましい…)、これくらいは我慢しなければならないだろう…。

 ゲストハウス横の海岸では、3羽の若いハクトウワシが、せっかく捕まえた魚をゲストハウス近くの浜に落としてしまい、取りに来ることができなくて、びしょぬれになりながら上空を飛んでいる。落とした魚の近くに人間はいないのに、ふだん人間がよく現れる海岸だから近づけないのだろうか。
 あんなに大きく勇ましい外見なのに、自分よりはるかに小さいカラスやカモメにすらいじめられる。ハクトウワシってほんと気が弱い。目が合っただけでギャーと言って襲いかかって来る(?)どこかの青い鳥にも、これくらいの警戒心は持ち合わせてほしいものだけど…。

カートの家のそばでくつろぐ若いイーグル。
私たちは怖くてもカートは怖くないらしい。
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 10時ごろ、I31sをはじめとして東からオルカたちが戻って来た。Rsが出て行ってからというもの、「I31sのほうは全頭揃っている」「いや、いない」などのでたらめ情報が飛び交った。I31sは、群れの長であるI31さんが94年に亡くなってからというもの、それぞれの娘家族で独立しだしてばらばらに泳ぐことが多くなった。そのとき9歳の身でお母さんを亡くしたオス、I46が、のちに同じくお母さん(I46の姉)を亡くした小さなI80を育てているという、なんとも不思議な家族。
 今日はI35sが確認されたおかげで、全てのI31sが揃っていることがわかった。出て行ったのは、Rsの小さな群れだけ。でも、残りの群れが全部いるおかげでなんだかちょっと「らしくない」スーパーポッドだったなぁ。

 I31s、I15s、A12s、A30s、A4s、A5sという全ての群れが西へと進んだころ、A36sがオルカラボの前を通過してジョンストン海峡へと入った。天気が悪く、雨と風が強かったおかげか、最初に現れたオスの背びれはあまりうねっているように見えず、みんな「A46だ」と口々に言っていたが、日中いちばん目のいいはずのわたしには、どうしても背びれに小さな傷が見えなかった。しばらくして、お兄さんのA32と一緒にA46が視界に現れた。こっちにはちゃんと傷がある。最初に行ったのはやはり傷のないA37のほうだった。しかし背びれが若く見えるなんて、悪天候もA37にとってはいい演出になったものだ。

「トドの羽」
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 ジョンストン海峡にいたオルカたちは、ブラックニー・パスの入り口でA36sを迎え入れ、落ち着くまでウロウロしたが、東へ向かうことに決めたらしかった。

 午後8時まえに、A4sのコールがラビングビーチの水中マイクから聞こえ、これを最後にコールは途絶えた。ヘレナがラボに入って来て、録音、スキャニング、アーカイビングにあけくれていた私たちに「もう、仕事やめなさい!!」と言って全ての電源を落としてしまった。私たちはむりやり休まされることになった。こんな日は早寝してしまおうということになり、ベッドへ…。

 これでおしまいだと思っていたが…。もちろんそんなに甘くない。A30sのコールが再びCRPTの水中マイクから聞こえてきたのは午後11時47分だった。
2007-09-02 : 未分類 : コメント : 1 : トラックバック : 0
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プロフィール

Tomoko(Orcalab Japan)

Author:Tomoko(Orcalab Japan)
カナダ・BC州の海洋生物研究所「オルカラボ」で、野生オルカ(シャチ)の鳴き声の解析スタッフをしています。
夏の間は研究のためオルカラボのあるハンソン島に滞在。日本ではよくライブハウスにいます
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