夏になると、野生のオルカが鮭を追ってたくさん集まってくる、カナダ、BC州のジョンストン海峡。その中でも、オルカが特に頻繁に通過するハンソン島から、毎日の生活とオルカの様子を、日本の皆さんにお届けします!

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
-------- : スポンサー広告 :
Pagetop

8月2日

午前7時45分。
家族においていかれた「まいごのおっさん」は、ジョンストンのボスであるハッスルばあちゃんに保護され、ばあちゃん率いるA12s、A24s、A5sと共に東から戻ってきた。
この日からウオッチングボート、各監視ポイント、オルカラボ間の無線情報で、ついたあだ名は「Mr.ロンリー」。実に痛々しい…。

ああ、ミスターロンリー
08080201.jpg


しかし、そろそろ研究者やウオッチングボートのみんなは心配しはじめていた。
ちょっと家族に置いていかれただけだし、置いていった当のA30sじたいも、彼がジョンストン海峡にいることはわかっているのだから、ついてこないことに気付いたら、すぐに迎えにくるだろうと誰もが思っていた
まいごのおっさん、Mr.ロンリー本人もきっとそう思っていただろう。

レジデントオルカのオスというのは、実に精神面が弱い。
群れのリーダーであるお母さんに先立たれると、非常に高確率で自分も魚すら食べられなくなって死んでしまうほど繊細な動物。
兄とか弟がいれば男同士なぐさめあえるけど、姉妹しかいなかった場合、またその姉や妹に子供がいて自分の家族を持っていた場合、孤独に耐えきれず死んでしまう確率はもっと高くなる。
彼も今回はただ自分が置いていかれただけで、家族が無事であることはわかっていると思う。でも鳴き声を聞いている限りでは、落ち着いていると思われる瞬間はまるでなかった。

さて、西へと進んで来たMr.ロンリーは、CPの前を通過すると、北の音が聞こえるブラックニー・パスに顔をつっこんだ。ここはオルカたちが、他のオルカたちが来ていないか耳を澄ませることで知られる場所、調査用語でいうリスニング・スポット。

もちろん家族の声は聞こえない。いないもの。


と、突然Mr.ロンリーはとてつもなく変な叫び声をあげ、急に方向を変え、それまで付き添ってくれていたA12s、A24s、A5sと離れて、気が狂ったかのように猛スピードで東へと進んでいった。
ばあちゃん率いるA12sは北へ向かい、おっさんの保護はA24sとA5sが担当することになった。

Mr.ロンリーはひっきりなしにA30sの家族の鳴き声…N47ばかり出しながら1日じゅうジョンストン海峡を行ったり来たりしたが、家族は戻ってこなかった。

ゲストとか、取材とか、まいごのおっさんとかで弱り切ったわたしたち(わたし、桃、ゆみ、エヴァン)は、ラボの屋根裏に集まって倒れた。

悪いことは重なるもので、みんなのデイビッドがいなくなったうえに、インターネットの復旧も未定。オルカライブも落ちたまま。
ジューンコーブが直る日も先延ばし。
ジューンコーブがないからわたしたちの食べ物もほとんどない。
調理に使うプロパンガスも、発電機のためのガソリンも、最低限しかない。
去年から海峡に沈んでいる石油トラックを取り除く日も、先延ばし。
ジョンストン海峡にはびっくりするほどサーモンがいない。
食べ物であるサーモンがいないから、オルカたちもやせている。
フェデラーが負けてヘレナが切れる。
まいごのおっさんは叫び続ける。

まぁ、こんな年もあるだろう…。
がんばって乗り切るしかない!!笑

ディナー前に笑顔のポール・スポング博士
08080103.jpg


寝る前に空を見上げた。
数えきれないほどの星が、淡くまたたいていた。
スポンサーサイト
2008-08-16 : オルカ : コメント : 2 : トラックバック : 0
Pagetop

8月1日

日付がかわるころ、ジョンストン海峡入りしたA36sとC10s、Ds、I31sは、コールを出しながらいっせいに東へと進んだ。
なぜか、最後尾のA30sだけが遅い…。ラボ前を通過しているのだが、とほうにくれるほど呼吸音が先に進まない。何をやっているんだろう?

ほとんどのオルカたちが東へ消えたころ、ウェイントン・パスから、あるすてきな群れが流されてきた。
I15sー!!
A30sは、ぐうたらで潮の流れでしか動かないこの群れを…待っていたらしい。

I15sとA30sが手を組んだら大抵、わたしたちの睡眠時間など元からなかったものとあきらめなければならない。
彼らは夜通しロブソンバイトで動かず、朝になって潮に流されブラックニー・パスの入り口で動かず、お昼になってもCPの沖で浮いていた。

C10sとDsはお昼前に東から戻ってきてそのまま西へと消えた。浮かんでいたI15sも、意外なことにそれ以上の迷惑マシーンぶりを発揮しないまま、I31sと共にウェイントン・パスに消えて行った。


夜通し寝られなくて昼も忙しかったのに、わたしたちはずっとそわそわしていた。

ボブ・サップ上陸。
08080101.jpg
注:本物です。

前々から、ポールとヘレナの友人であるシアトルの撮影陣が
「次に来るときはビースト(ボブ)を連れてくるよ!!」と言っていたが、ついにそれが実現。
撮影陣のひとり、トミーが、たまたまボブ・サップの親友で、ボブも常々ハンソン島の話を聞いて「いつになったらその島に連れて行ってくれるんだ!!」とエキサイトしていたらしい。

そんなわけでさっそく、ポールがラボを案内。
ボブ・サップはオルカに興味津々で、説明するポールの言葉に熱心に耳を傾け、いろんな質問を投げかけ、感心して、見るもの全てに興奮していた。
ラボの次はお決まりの観光地…「千年杉」へ。
「いっしょに来なよ」と、撮影陣のトミーに言われたけど、CRPTの水中マイクからずっとコールが聞こえていたので、わたしは泣く泣くラボに残った。

この特別ゲストの上陸。
サービス精神旺盛なA1ポッドがおとなしくしているはずもない。
ポールが千年杉までボブ・サップご一行を案内している間に、あからさまに「ブラックニー・パスへ向かっていますよ」的なA36sのコールがPIの水中マイクから聞こえてきた。

「オーーーーーールーカーーーーーー!!」
エヴァンのシャウトはきっちり千年杉まで届いた。
ボブ・サップたちがちょうどラボのデッキに戻ってきたころ、A36sの三兄弟は、スコープなしでも自分たちの姿がはっきり確認できるラボ寄りに、ブラックニー・パスをゆっくりと通過して、北へと向かって行った。

ディナーの準備をしていた桃ちゃんとゆみちゃん、そしてヘレナは、A36sを見送ると、急いでキッチンに戻って行った。
ポールとボブも撮影のために海岸に向かい、デッキにはエヴァンと、ゲストのティム一家が残った。
わたしはラボ内でひとり、録音を続けていた。

エヴァンが北に消えるA36sをスコープで追っていると、ティムが「向こう岸の方にもオルカが見えるよ」と指さした。
エヴァンはスコープを南へと向け、その遠い群れの個体識別をした。背びれが波打っている大きなオス1頭と、背びれ前方に大きなキズのあるオルカを含む群れ…。
A30sの一部だ。

エヴァンは必死に残りのA30sを探したが、見つからなかった。
一緒に探してくれるのは、監視に全く慣れていないゲストの家族だけ。
あまりにも向こう岸よりに泳いでいれば、小さなメスの背びれは霞の中にまぎれてしまうだろう。
でも、もう1頭の大きなオスまで見逃すだろうか?

「ごめん、どうしても探せなかった」とエヴァンはホワイトボードに書いて、ラボ内のわたしに見せてきた。ばたばたしていたし、仕方ない、どうせみんな一緒にいるだろうと、わたしは特に気にもとめずに、ログブックに「A30sは北へ進んで行った」と書き込んだ。

その直後だ。
CRPTの水中マイクから、A30sのコール…N47が聞こえたのは。

何故に!?ヘッドフォンを耳に押し付け、確認する。
北のFIの水中マイクからA30sのコール。
CRPTの水中マイクからも、A30sのコール。

エヴァンが確認したのはA30sの一部だけだ。つまり、少なくてもA30sの中の1頭が、ジョンストン海峡に残ってしまったことになる。


今日のディナーはボブ・サップと一緒、時間の都合でいつもより早い5時スタート。
元すし屋のゆみちゃんがヘレナに頼まれて巻き寿司をつくった。ヘレナのパンに、撮影陣が持って来てくれた紅鮭、日本酒という豪華なディナー!!

…だけど、A30sが二手に分かれるなどというとてつもない事をしでかしてくれたので、わたしはラボに残らなくてはならなくなった。
ひとりぼっちのディナー。
ジョンストン海峡に残った「A30sの誰か」の鳴き声が、ほぼ絶え間なく響いていた。
何度も何度も繰り返されるA30sの家族のコール、N47。
その声はとてもじゃないが、まともな精神状態の鳴き声には聞こえなかった。
ひとりぼっちのオルカ。
…でも、何故?

ディナー後、暗くなる前にウォータータクシーが迎えに来て、ボブ・サップのご一行はハンソン島から去って行った。

記念写真わーい!!
08080102.jpg

ところで「この日の戦いのために」と日々身体をきたえていた桃ちゃんだったが、実際のボブはとても明るくフレンドリーで、知識豊富で、いい人だった。
桃ちゃんはこの筋肉を戦いのためでなく、さらなる外仕事のために有益に使おうと決心し、ボブを見送った。

08080104.jpg


早いディナーと片付けが終わり、みんなでお茶を楽しんでいると、そこに目撃情報が入って来た。

ジョンストン海峡にひとり残されたのは、わたしたちが確認できなかったもう1頭のオス…おそらくA38であるもよう。これは個体識別においてかなり信頼できる人からの目撃情報。
しかしどちらのオスであるにしても、おっさんと言っていい年齢の大人のオスであることはかわりない。
何故この慣れ親しんだジョンストン海峡で迷子になってしまったのか…。

実は、A30sのオスの1頭が、この午後からA23sの少年、A60と、何やら興奮した様子で暴れているのが目撃されていたらしい。
遊んでいたのか、一見、もめているようにも見えたが、所詮、争うことができないオルカの世界。もめていると言っても、胸びれで一生懸命パンパン、お互いに水しぶきをあびせる程度だったとか…。
夕方になっても2頭のその行動が続き、その間にしびれを切らしたらしいA30sが、彼を置いて北へと向かって行ってしまったらしい。

結果、まいごのおっさんが誕生。

スプリンガーが迷子になって、同じ鳴き声を繰り返していたときは、心配だったがとてもかわいかった。スプリンガーはたった2歳の、メスの赤ちゃんだったから。
でも、今回は違う。必死に家族の方言を繰り返す、いい年こいたおっさんの叫び声。
「おかあさぁ~ん!!おかあさぁ~ん!!おかあさあぁぁぁぁぁん!!」
これは悲惨すぎる…(´Д`;)

しかも置いていかれた原因が、みんなが北へ向かうのも気付かずに、16歳の少年と遊んでたから(もめてた?)からだったとか!!
しかも胸びれで一生懸命パタパタお互いに水しぶきかけてたとか!!

ていうか、A30s…ひどくね?なにも置いて行かなくても…。

かわいそうなまいごのおっさんは、ジョンストン海峡に残っていたA12s、A24s、A5sに保護され、東へと進んでいった。
2008-08-12 : オルカ : コメント : 8 :
Pagetop

7月31日

この数日オールナイトでの録音が続いた。
何が故障してしまったのか、インターネットも接続できなくなってしまった。
完全に外界とは隔離された島…だけどなぜか誰も焦りを感じていない。外との連絡手段がなかったらなかったで、心にゆとりすら感じる。
スポーツの結果をチェックできないヘレナはちょっとイライラしてるみたいだけど…笑

わたしは東に向かうオルカたち(A12s、A24s、A5s)を見送っ…聞き送って、午前3時過ぎにようやく寝袋に入った。

今日は大切な友達が帰る日。
アラスカ出身のデイビッドは、桃ちゃんと汚れた靴下の投げ合いを毎日するくらいいたずらっこだけど、とても仕事をおぼえるのが早く、力持ちで、オルカについての知識も豊富で、誰とでも仲良くできるムードメーカーだった。

いちばん帰ってほしくない人が帰ってしまうので、わたしたちガールズ3人は朝から落ち込んでいた。このさみしさを共有できるエヴァンは、まだCPに島流しのまま。
たった1ヶ月しか一緒にいられなかったけど、まるでカナダでの家族のような仲間。

言葉も少ない桃&ゆみ
08073102.jpg


ポールがデイビッドをカーでアラートベイまで送り、ディビッドがわたしたちの食材を少しだけ買い出ししてくれることになった。
それぞれのショッピングリストを提出。
ゆみちゃんのリストを見て、わたしはびっくりした。
「チョコレートクッキー」
それひとつだけだった。


気になる情報が入って来た。
北で調査をしている研究者のグレアム・エリスとジェレッド・タワーズが、こちらへ向かっているたくさんのオルカたち…A30s、すべてのI31s、C10s、D11sを目撃したらしい。
彼らの位置と速度から考えると、真夜中か明日の朝にはやってくるだろう。
いまジョンストン海峡にいるオルカたちを含めるとかなりの数になることは間違いない。やったー!!


せっかくたくさんのオルカがやってくるというのに、彼らの到着を待たずに帰らなければ行けないデイビッド。
わたしたちは彼の荷物を岩場まで運ぶのを手伝い「絶対、来年また一緒に働こうね!!」との約束をして、北のアラスカへ帰るデイビッドを見送った。


アラスカに帰った翌日に、シアトルに野球見に行くんだってー!!笑
わたしらみんなで「イチローによろしく」って言っといた
08073101.jpg


なんと!!北から向かっていた大きな群れは、深夜どころか、午後8時台に水中マイクのエリアに入ってきた。
ヘレナに命じられてラボに監禁され、ヘッドフォンをつけさせられる。
そしてびっくり。先頭をきっているのはA36s。どうやってグレアムとジェレッドの目をすり抜けてきたのだろう?
さらにDsは、D11sだけでなくD7sもいるようだった。
A36s、Ds、C10s、I31sは、真っ暗な中オルカラボの前を通過してジョンストン海峡へと入った。
最後尾はA30sだったが、さっさとジョンストン海峡に入り、東へ向かったほかの群れとは違い、これがなっかなか進まなかった!!
彼らがどうしてそんなに遅かったのか理由がわかるのは、日付がかわってからだった。
2008-08-12 : オルカ : コメント : 1 :
Pagetop

7月28日

オルカたちは東へ行って日付が変わる前にはレコーディングも終わり、誰もが気持ちよく眠りについたが、わたしは朝5時に起きて、寒いラボでひとりぶるぶる震えていた。

ヘレナがここ2日間に渡って「朝6時半に遠い遠いコールを聞いたんだけど…?」と言ってきたからだ。
わたしは両日とも5時半に起き、トイレに行って、ついでにラボでしばらく音を確認し、6時すぎにまた寝袋に入っていた。だいたい、再び寝袋に入るときは、寒いから頭まですっぽり潜ってしまう。
油断した。悔しすぎる。

明るくなって行く空はだんだん赤みを帯びてきた。
わたしはゆみちゃんを起こしに行った。自分だけこの空の写真を撮って、ゆみちゃんを呼ばなかったと知ったら、命に関わる。
桃ちゃんはきっと、呼んでも「あーほんとだきれいだねー」と言ってまた寝ると思ったので、起こさなかった。

08072801.jpg

早起きした甲斐があったのかなかったのか。7時過ぎにラビングビーチの水中マイクからオルカたちのコールが聞こえてきた。

A12s、A36s、I15s、I31sは東から出て来るとCP沖まで進んだ。そこで潮の流れが変わり、I15sはハンソン島の東端に避難した。

A36sはとても強い潮の流れに逆らって、オルカラボの前を通って北へと向かった。ものすごく泳ぎにくそうだった。
しばらくしてA12sもオルカラボの前にやってきたが、やはりばあちゃんが普段から潮の流れとは逆向きにぶっ飛ばしていて鍛えられているせいか、彼らは非常にうまくすいすい泳いで行った。

今日はすごい嵐!!
I15sもすいすい流れるくらいのすごい嵐。寒さと雨でわたしたちは凍えて、ずっとラボの中で交代で録音をしながら震えていた。

嵐のため、今日来るはずだったゲスト一家も上陸できず、1日先延ばし。その間にわたしたちはゲストハウスの準備をした。
しかも、嵐なのに、ヘレナが疲れきっていたため、まさかのメインハウスでのディナーなし。風が強いキャンプキッチンでは、こんろの火が風に吹かれてやかんに届かず、お湯を沸かすことすら困難だった。
桃ちゃんとゆみちゃんが、ヘレナにもらった残り物のパスタを温めようとしてくれたが、ラボにいたわたしが駆けつけた時にはすでに冷めきっていた。

ラボに戻ってみんなやヘレナと話していると、ラボの前のデッキにすたすたと桃ちゃんが出てきた。こんなに寒いのに、雨が降っているのに、風だってとても強いのに…。
海に何か見えたのだろうかと思って桃ちゃんの様子をみんなでじっと見ていると、見られていることに気付いた桃ちゃんは、びっくりした表情でそのままデッキを通過していった。

わたし「…なに、あれ?」
ヘレナ「ただの野生のモモコでしょう」

ラボに戻ってきた桃ちゃんは正直に本音を吐いた。
「わたし、台風とか嵐、超テンションあがるんだよ。だから強風に吹かれてたそがれようと思ってデッキに出たら、ガン見されててびびった」
本当に野生だった。


嵐はわたしたちだけでなく動物たちの生活も脅かした。
暗くなる直前、ゆみちゃんが、ケルプにからまれておぼれそうになっているあざらしを発見。
「なんで暗がりの中そんなに見えるんだ」と疑問を抱きたくなるような魔法の視力で…。
わたしたちと夫妻はしばらくの間、波に押されて岩場に流されるあざらしを見守っていたが、最初、上を向いて顔だけ水面に出してあくびのような行動を繰り返していたのに、徐々に顔が沈み、ハナ先しか見えないようになり、そのハナ先すらも荒い波に飲まれそうになってしまった。

08072803.jpg

ポールが「何とかできないだろうか」と長靴をはき、パイプオールを持って岩場に降り、あざらしにからまっているケルプをパイプオールで引っ張った。
からんだケルプがゆるんだ瞬間、それまでぴくりともしなかったあざらしは、ものすごいスピードで沖へと泳いでいった。

嵐の音を聞きながらわたしたちは交代で眠った。
美しい鳴き声だった。
オルカたちは翌朝まで鳴き止んでくれることはなかった。
2008-08-12 : オルカ : コメント : 2 :
Pagetop

7月27日

※こちらでのインターネットの接続に問題があり、
2週間ほど更新ができなかったことをお詫び申し上げます。

* * * * * *

コールで目が覚め、飛び起きて1階のラボへ。
同時に来たヘレナが録音をスタートさせていた。
目を合わせて、お互いガッツポーズ!!

このまぬけな鳴き声と、その背後の美しい声で、全ての事情が飲み込めた。
ハッスルばあちゃんA12と息子のA33が、娘家族のA34sと離れてまで、ここに連れてこなければならなかった群れ。

昨晩、北のクィーンシャーロット海峡まで「その群れ」を先導してきたA12とA33は、
「ここまで来たらもう大丈夫、あとは任せた」と、「そのなかなか泳がない群れ」を、後ろから必死に押してきた大きな3兄弟に託して、家族に会うため東へ向かった。

3兄弟は我慢づよくじっと満ち潮を待ち、潮の流れに何とか「その喋ってばっかりで泳がない群れ」を乗せて、ジョンストン海峡へ入って来た。
考えてみれば、何てことない、いつものパターンだったのだ。

泳がない群れ=能天気ぐうたらお姉様軍団、I15s。
3兄弟=世にも美しい鳴き声の繊細な男たち、A36s。

主要登場オルカは完全に出そろった。
これでジョンストン海峡の夏本番!!\(^o^)/

オルカたちがいったん東にいってレコーディングも落ち着き、ラボの中からぼーっと海を見ていると、カマイルカの群れがラボのそばまで泳いで来ているのが見えた。

08072702.jpg

30頭くらいの小さな群れ。ラボ前50メートルくらいまで来たので、慌ててメインハウスにポールとヘレナを呼びに行く。
イルカたちはリラックスしているようだった。
ラボ前のケルプの中から、あざらしが顔を出していた。

イルカたちは北に消え、わたしたちもいったんラボのデッキから離れた。すると、ひとりでデッキにいた新人のベリーナが、海を指さしている。
再びみんなでデッキへ。今度は別のカマイルカの群れが、やはりオルカラボ寄りに進んで来た。再びポールとヘレナを呼びに行く。
その20頭くらいの群れが過ぎ去って、ポールとヘレナはメインハウスに戻ったが、そのとたんにまた別の20頭くらいの群れがやってきた。
「もうメインハウスに戻らない方がいいのかしら」とヘレナは笑っていた。

イルカたちを見送ると、沖にミンククジラがやってきた。
去年はおそらく1回も見ることができなかったミンキーだけど、今年はなぜかブラックニー・パスがお気に入りらしく、おそらく同じ個体を何度も見かける。
ポールが「今日はなんて海洋生物に恵まれた日なんだ」と興奮しながら、大きなレンズのカメラを持ってやってきた。
みんなでスコープにつき、ミンキーを観察する。そのミンキーは、海面に口を出して、何かを食べているような行動を見せた。

みんなが夢中になっている間、デッキの左端にいたわたしは、奥から何か、ガサガサ聞こえるなぁと思っていた。何度か振りかえったが、誰もいない。
風かな。ミンキーを見るためにスコープをのぞく。やはり、後ろでガサガサいう。
振り返って、デッキの下にチラと目をやった時、息が止まった。

…しか。
08072701.jpg

ハンソン島にはシカの親子が住んでいる。でも、まさかこんな昼間っから、こんな人間がいっぱいいるデッキまでやってくるとは!!

ミンキーを見て歓声をあげているみんなの方を振り返り、
「しか!!」と、ささやき声で教える。みんな驚いたが、いっせいに背をかがめ、足音をひそめて、そっとわたしの立っている位置までやってきた。

「自然がいっぱいだー!!」この連続に興奮したポールが両手をあげた。
「シーッ!!」即、みんなに叱られた。
ポール、いちおう博士なのに…。

シカはわたしたちのほうをチラッと見たが、特に恐がりもせず、木々の葉をおいしそうに食べながら、ゲストハウスの方へとゆっくり歩いて行った。

シカが去って、ミンキーはどこへいったのだろうと再び海を見ると、沖に高くあがった潮吹きふたつ。
「ザトウクジラだ」
みんな爆笑。5分~10分ごとに何かが見られる。2頭のザトウクジラは二手にわかれ、1頭は北へ、1頭は南へと進んで行った。

さすがにこれでおしまいだろうと、ラボの中に戻る。
何の前触れもなかった。デッキの向こう、10メートル沖。
水面から巨大な何かが浮かび上がって、ラボの中からでもわかるほどの大きな呼吸音をたてた。ブホオオオオッ。

さっきのミンククジラ!!( ̄□ ̄;)

もうみんなデッキから去っていたが、急いで、とりあえずマップルームにいたメラニーを呼び、デッキへ走る。
ミンククジラはもう一度、ラボの沖30メートルくらいのところでひと呼吸すると、深く潜って再び現れることはなかった。

なんて日だ?

かわいそうなのはシェーンだ。彼は突然思い立って徒歩45分の森の中、ウォーラスのキャンプへ遊びに行き、この一連の出来事を全て見逃した。しかし、アキとインドについて有意義な話ができたらしく、満足そうな顔でラボに戻ってきた。

オルカたちは引き潮に乗ってウェイントン・パスを通過し、北へ出た。
潮の流れが満ち潮に変わった午後7時14分。I15sの大きな鳴き声がFIの水中マイクから聞こえてきた。このまま満ち潮に乗ってラボ前に来るつもりらしい。
なんてわかりやすいんだ…(´Д`;)
ヘレナに報告しに行くと「きっとI15sたちは夕日を見に北へ出ただけだったのね」と、全く泳ぐ気のないこのぐうたらな群れを、ヘレナなりの愛でかばったロマンチックなジョークで返してくれた。

A36sに付き添われて、I15sとI31sはオルカラボ前にやってきた。
美しい夕暮れだった。

080727i46.jpg

ウォーラスのキャンプから戻ってきてたのに、不運なシェーンはオルカまでも見逃した。
ディナー時だったのに、なぜかシャワーを浴びていたらしい。

前日に雨が降ったので久しぶりにサウナを焚き、真水の熱いシャワー。
冷たい海でそのまま頭を洗うことに慣れきっていた桃ちゃんは「シャワーめんどくさい」と入ることを渋っていた。たくましい。
戦いの日は、もうすぐだ。
2008-08-11 : オルカ : コメント : 2 :
Pagetop
ホーム

プロフィール

Tomoko(Orcalab Japan)

Author:Tomoko(Orcalab Japan)
カナダ・BC州の海洋生物研究所「オルカラボ」で、野生オルカ(シャチ)の鳴き声の解析スタッフをしています。
夏の間は研究のためオルカラボのあるハンソン島に滞在。日本ではよくライブハウスにいます
メールはこちら

FC2カウンター

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。