夏になると、野生のオルカが鮭を追ってたくさん集まってくる、カナダ、BC州のジョンストン海峡。その中でも、オルカが特に頻繁に通過するハンソン島から、毎日の生活とオルカの様子を、日本の皆さんにお届けします!

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9月11日

 前日の夜ほとんど眠れなかったので、今日はしっかり寝ようとゆみちゃんにエンドボイスを任せて10時台に寝袋に入ったのに、スピーカーから聞こえてきた音で目が覚めたのは午前12時半だった。
 スピーカーやヘッドフォンからは、ほとんど聴いたことのないこの音。でも、鯨類が好きな人なら誰もが知っているであろう、この不思議な美しい音色。
 ザトウクジラの「歌」だ!!

 ここ数日間からはとても考えられない素早い動きで、私は階下に飛び降りた。そして一刻も早く録音を始めようとDATの電源を入れる。うーっ、こんな時に限ってDATが「クリーニング」表示を出す…もーっ早く早く早く~!!ザトウクジラがこの海域で歌うことなんて、ほとんどないんだから!!

 ようやく録音開始、ノイズ除去のためにFI以外の全ての水中マイクをシステムから外す。音量を調節、ログブックに時刻を書き込み、ヘレナに知らせようとラボの外へ飛び出ようとすると、ちょうどヘレナが起きてメインハウスからダッシュでやってきたところだった。スピーカーからはまだ流れるザトウクジラの歌、美しい旋律。
「凄い,凄い!!」私たちは大興奮しながらラボへ入った。冷たい北の海、ブラックフィッシュ・サウンドでその大きなクジラは歌っていた。
 ザトウクジラのオスはふつう、繁殖シーズンに暖かい海で歌う。メスの気を引くために歌うのだと言われている。季節も場所もかけ離れたこの海で、こんなにも強く美しい歌を歌わなければならなかったのはなぜ?
 場所とか海の温度とかシーズンとか、そんな条件は全く関係なく、今、どうしてもここで歌わなければならなかった。彼の価値観を根底から覆すくらいの衝撃的な女性との出会いが、そこにあった…のかもしれない。
 (^ω^*)

 録音を2時すぎに止めて寝袋に戻ったが、1時間後むくっと起き上がらなければならなかった。今度は激しく不機嫌な私、コールの主はA30sだ…朝にはナイアッドでの冒険が控えているっていうのに。なぜこのタイミングなのか。ため息をつきながら1階に降り、ため息をつきながら録音スタート、またため息をつきながらログブックを書いていると、モモちゃんが「録音しようか?」と声をかけて来た。
…いつもいたずらされてるのに、一瞬、天使に見えた。
 A30sは私たちをこき使った。ゆみちゃんが交代して録音を止めたのは午前6時をまわっていた。

「ナイアッドが迎えに来るから起きて~!!」
午前9時半、私はほとんど寝ていなくて潰れているモモちゃんとゆみちゃんを叩き起こした。どんな目覚ましよりも効果的なこのひと言に、まだ血圧の低い2人ももぞもぞと起き出す。
 ブラックニー・パスはいちめんの霧。もー真っ白。寒いだろうからダウンジャケットを着て、IDブックと双眼鏡の入ったリュックを背負い「あ、毛糸のぼうし…」と思って、何も考えずにラボにあった「ORCA」と「LAB」のぼうしの「ORCA」のほうをかぶって外に出ると、ヘレナがそれを見てキャーと悲鳴をあげ「オルカライブのオーディエンスが乗ってるのよ!写真撮られるわよ?待って、違う帽子を取って来てあげるわ」と言って、メインハウスから可愛いニット帽を持って来てくれた。
 オルカライブの英語版の方の視聴者たちは年に1回、ナイアッドに乗って実際にオルカを見て回っている。そして最終日にラボ見学に訪れる。まあラボ見学のほうはいいととして、すでにナイアッドに乗ってるのか…ラボのアシスタントはアホだと思われたら大変だから気をつけよう。

 潮は低かったので私たちはいったんジューン・コーブに乗り、沖に止まったナイアッド・エクスプローラへ送られた。私たちは船長・ビルの息子タイソンに「ヘーイ!!やっと来たな」と引き上げられ、ナイアッドに乗り移った。すでに満員と言ってもいいほどの混み具合だった。私たちは乗客に「オルカラボから来たの?」と大歓迎で迎え入れられた。ボートは真っ白な霧の中を進みはじめた。
 A30sは北のブラックフイッシュ・サウンドを横切っていた。最初に私たちの視界に入ったのはA39だった。

「ほら、あれを見るんだ!ドーサルフィン、つまり背びれだ。素晴らしい」
ビルがボートを停め、操縦席から出て来て乗客に説明…する。私は時間と場所を確認して、紙に書き込んだ。そう、ボートに乗ったとしてもやはり仕事は仕事。少しでも詳しい監視データをヘレナに届けなければならない。
 残りのA30sはウェイントン・パスの方へと向かったようだった。A39は少し鳴くと、方向を変え、家族のもとへと向かって行った。

200709053.jpg

 ナイアッドは霧の中、ウェイントン・パスの小さな島々の間を抜ける。ジョンストン海峡へ出ると、視界はずいぶん良くなった。A39とA54sはハンソン島側に進み、A38、A30、A50sはバンクーバー島側に渡って、東へと進んだ。双眼鏡で個体識別をしながら、状況を事細かに書き込んでいると、タイソンが私たちの前に現れてこう言った。
「ヘイ、ガールズ、腹はちゃんと減ってるかい?」

 オルカを見ながらのランチ・タイム。こんな幸せな時間があっていいのだろうか。特に、タウンランを前にしてほとんど食料のつきていた私たちには、涙が出るほどありがたいものだった。キッチンに入ったタイソンから、暖かいスープとおいしいパンがトレーに乗せられ、差し出された。モモちゃんとゆみちゃんはあっと言う間に完食し、おかわりのためにタイソンのもとへ戻った。
「おおっと~?しばらくものを食べていなかったかのような食べっぷりだなぁ」
再びスープが注がれる。パンも食べるのかと聞かれ、2人が「うん」と迷わず答えるのが聞こえた。私がおかわりをしに行くと、聞かれるまでもなくパンが添えられた。

 霧の晴れたジョンストン海峡は美しかった。ほんのちょっと角を曲がったところにあるのに、普段、聞いて想像することしかできない海の姿。豊かな緑色の海岸。オルカたちの息吹き。

200709111.jpg

 ビルはボートを停め、IDブックを手に取って、面白可笑しく、わかりやすく、絶えず皆の注意を引きながら、この海峡のこと、オルカたちのこと、研究者の功績について説明した。皆は腹を抱えて笑い、そして感心し、目の前の海を泳いで行くオルカたちを見つめていた。
 この海峡に、生きている強い生命。

「ガールズ、さあ操縦席へ入るんだ!」
ビルに招かれて私たち3人は操縦席へ入った。ナイアッドにおいていちばん見晴らしのいいその場所は、船長の特等席。ザトウクジラやトドの群れに手を振りつつ、まだ霧の残る海峡をナイアッド・エクスプローラは走って行った。オルカたちのために考案されたその特殊な構造で、この美しいジョンストン海峡に、ほとんどボートノイズを響かせることなく。

 私たちは16日にハンソン島を出ることになっていた。だからナイアッドから見るこのジョンストン海峡のこの風景を、強く目に焼き付けておかなければならなかった。最高の船長と乗組員を乗せたナイアッド・エクスプローラは、私たちを最愛の場所、ポールとヘレナが待つオルカラボへ送り届けるため、ブラックニー・パスへと向かって行った。

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 今年も日記のご愛読ありがとうございました。
 また来年、オルカたちの声と共にお会いしましょう。
 Tomoko、 Momoko、 Yumi
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2007-09-17 : 未分類 : コメント : 11 : トラックバック : 1
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F.O.KIDS寒い冬もぬくぬく☆カラフルニット
同梱無料で購入しましたが、お品から見てももーちょっとお安くてもよかったような…送料が上乗せされてるカンジが…f(^^;実用品・普段使い  送料無料でレッドを購入しました。今年の冬に大活躍しそうです。小さい子供はてっぺんにぼんぼんが付いているニット帽が
2007-09-18 14:36 : 帽子のレビュー
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帰国って何処へ?
おきゃえり~。
兎にも角にも取り合えず〝無事帰還〟おめでとうございます。
 Tomokoさんのことだから帰国と言っても故郷ではないですよね(笑)。
2007-09-25 09:45 : rintairan URL : 編集
帰国しました
皆さんありがとうございました。このブログも今年は去年の3倍のヒット数を記録しました。街の中で暮らす皆さんに、自然の中で生きる動物や海についての興味を持ってもらい、身近に思ってもらい、楽しんでいただけたのであれば、こんなに嬉しいことはありません。自分たちも美しい自然と同じ時の流れの中に生きていることを、ほんの少しでも感じていただければ。

告知です。
9月30日(日)練馬・ホェールステーションでOSSのアシスタント報告会があります。この夏のお土産話を私たち3人が生の声でお聞かせします。詳細・お申し込みはOSSまで。
http://www001.upp.so-net.ne.jp/OSS/

F.I.B全国25カ所ツアーまわっています。私も7カ所行きます。ぜひライブハウスにもお越し下さい!壮大な地球の歌、反戦の歌で一緒に拳をつきあげましょう☆
http://www.fib-21cnos.com/top.html

それでは、日本でお会いできる皆さんはまたすぐに。そしてそうでない皆さんもどうか、また来年までお元気でいて下さい。

ヘタレさん>無事に帰国しました!!何から何までほんとうにありがとうございましたm(_ _)mまた写真送りますので楽しみに?しててくださいね(笑)
2007-09-23 15:23 : Tomoko URL : 編集
お疲れさまでした。
皆様お疲れ様でした。
そして楽しいお話を有難うございました。
来年は是非自費参加で挑みます。
いつ何時如何なる挑戦も受ける!

肉食いすぎ注意ね。
2007-09-21 08:08 : ヘタレ URL : 編集
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2007-09-19 15:38 : : 編集
お疲れ様でした(その7)
momokoさんyumiさん
そして大変な作業をしながらも
今年もとても楽しい日記を読ませていただくことができました。
とても感謝しています。
2007-09-18 01:30 : mina10 URL : 編集
ご苦労様でした。
帰国なのね。
少し残念です。
来年もよろしく、楽しみにしています。
2007-09-17 21:51 : URL : 編集
お疲れさまでした(その5)
厳しいラボワークの合間の、このブログやラボコメントへの書き込み、お疲れさまでした。Tomokoさんのうま過ぎる描写に、今年もジョンストン海峡と、そこにいる人たちを身近な存在として感じることができました。ありがとうございました。
2007-09-17 09:59 : yunja URL : 編集
お疲れ様でした(その4)
今年は例年にも増してのハードワーク、その上このブログ、
ほんとにお疲れさま&ありがとうございました。
いきいきと語られる日記のおかげで、
今年もオルカたちを身近に感じることができました。
ガールズのみなさん、気をつけて、X-dayに間に合うよう「早め」のご帰国を ^^/
2007-09-17 09:58 : kana_k URL : 編集
お疲れ様でした(その3)
毎年アシスタント業務の激務をこなし、かつossへの日記報告やご自身の「ハンソン島日記」を書き上げ公開するという神業的な行動に畏敬の念を覚えます。
とにかく今年もワクワクするような日記をありがとうございました。
そして元気なJapanese Girlsお疲れ様。
無事に帰国されますように。
2007-09-17 09:28 : 11月のキロ URL : 編集
お疲れ様でした(その2)
「ハンソン島日記」、ありがとう!
たのしかった~~。今年もバンクーバーで寄り道?
直行で日本に帰ってこないと、、、甲子園が待ってるよ(笑)。
2007-09-17 09:17 : rintairan URL : 編集
お疲れ様でした
今年も無事、ケガもせず素晴らしいハンソン島でのお勤めご苦労様でしたm(_ _)m
2007-09-17 04:18 : Maron&Goma URL : 編集
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プロフィール

Tomoko(Orcalab Japan)

Author:Tomoko(Orcalab Japan)
カナダ・BC州の海洋生物研究所「オルカラボ」で、野生オルカ(シャチ)の鳴き声の解析スタッフをしています。
夏の間は研究のためオルカラボのあるハンソン島に滞在。日本ではよくライブハウスにいます
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