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夏になると、野生のオルカが鮭を追ってたくさん集まってくる、カナダ、BC州のジョンストン海峡。その中でも、オルカが特に頻繁に通過するハンソン島から、毎日の生活とオルカの様子を、日本の皆さんにお届けします!

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8月3日(最終日)

あさ5時半に目覚めました。
うそでしょ、夜の間コールがなかった…?

お留守番に疲れすぎて起きられなかったのかと思い、ラボ内に行ってログブックをチェックしましたが何も書いてありませんでした。いちおう、アシスタントがこれだけいる時期は夜シフトの人はラボ内で起きていてモニタリングしているので、本当に鳴かなかったのでしょう。
9日目にして初睡眠!!


そして、あすの朝に島を出るのでこの日がラストデイです。


午前6時半。
さてオルカたちはどこだろう、まだ東かな?とexploreのラビングビーチカメラを操作していると、遠い東にものすごくかすかにひとつのブローが見えました。

「ひとつ…?」

ブローは本当に遠くそれきり見えなくなったので、ザトウクジラかな?と思い一応アラートベイにいるポール(早起き)に携帯で報告。
そのまま各カメラで監視を続けていました。



午前8時半ころ。
無線で「オスのオルカが1頭でカイカシュ川沖を西へと進んでいる」との情報が入りました。
え、まさかさっきのラビングビーチ東の遠い遠いブローはやっぱりオルカだったのか…?
すごいスピードで、ずっと1頭で泳いで…




T73Bくん!!??ヽ(゚Д゚)ノ




前日にコモックスの入江から飛び出て北西へと向かったT73Bくん(前日の日記参照)は、ものすごいスピードでジョンストン海峡を西へと進み私たちのエリアを通過して行ったのです。
午前6時半のあのブローが果たしてほんとうにそうだったかはわかりませんが、時間的にはぴったりでした。

彼は9時すぎにテレグラフコーブ沖を通過し、西へと進んでいきました。




あとオルカラボジャパンのツイッター(@Orcalab_JPN)では報告していましたが、サザンレジデントJ17sのJ35さん(1998年生まれのメス)のことをこちらでは書いていませんでしたね。

サザンレジデントのオルカたちは深刻な食糧(キングサーモン)不足に直面しており、栄養状態が悪いためかここ数年は赤ちゃんが生まれてもすぐに死んでしまう状態が続いていて、生まれた赤ちゃんが死ななかったのはなんと3年前までさかのぼります。
この20年で40頭が生まれましたが、その間に死んだのは72頭だそうで、現在は全部で75頭しか生存しておらず絶滅の危険にさらされています。


そして、7月24日にビクトリアの近くで生まれたJ35さんの赤ちゃん。
生きて生まれたものの、わずか生後30分で動かなくなってしまいました。


オルカたちは知能が高く、赤ちゃんが死んだことはJ35さん自身も家族も認識していたと思われます。
しかしJ35さんは動かなくなった赤ちゃんの身体をどうしても失いたくなかったようです。
鼻先に乗せて国境のほう、アメリカのサンファンアイランドに向かって移動しはじめました。
時折赤ちゃんの身体は鼻先から滑り落ち、海に沈んでいき、J35さんは深く深く潜ってその身体を回収しなければなりませんでした。




イルカやオルカの母親が死んだ赤ちゃんを1週間以上も離さないという事例はこれまでにも確認されたことがありました。他の哺乳類でもこういった行動は珍しくはありません。
しかしJ35さんのこの行動は1週間どころでは終わりませんでした。


常に赤ちゃんの身体を運んでいるため、魚を捕まえたりといった通常の食事はできません。
(オルカたちは食べ物をシェアする動物であるため、J35さんの長男が運んでいるのではという説もありましたが)
その状態でなんと1600キロ以上も海を泳ぎました。
他の家族(J17sは全員で6頭です)もJ35さんを置いていくようなことはせず、一緒にいたそうです。


こちらの記事では「この10年間に彼女は他にも2頭の赤ちゃんを失ったようだ」とありますね。
次々と赤ちゃんを失った悲劇を乗り越えるにはこの行動が必要だったのでしょうか。


しかし時間がたてば、どんなに冷たい海でも腐敗はします。
16日目に赤ちゃんの身体が崩れ始めているのが確認され、赤ちゃんの身体を運び始めてから17日目、先日8月11日にようやく海に落としたのが確認されました。


研究者たちは安堵しました。
これでようやくJ35が普通の生活に戻れるからです。
赤ちゃんの体は深く沈んでしまい、おそらく(人間も)回収して死因を調査することはできないであろうとのことです。


オルカは深く入り組んだシワのある脳みそを持っており、その大きさは人間の脳みその4倍です。
自然界で生きていく中で、このような巨大で複雑な脳を持つ必要があってそう進化していったということです。
高度な社会性、豊富な方言、それぞれの個性、家族の絆の強さ、家族と離れたときの強いストレス…20年観察していても「なんて面白い動物なんだろう」と毎年のようにあらためて思います。


J35さんにとっては赤ちゃんが死んでしまったことが相当なストレスだったのだと思いますが(海外メディアはわかりやすく「非常に強い悲しみ」と表現していますが、日本でそう書くと嫌がる方が一定数いらっしゃいますので…)、赤ちゃんを海の底へ落としようやく一区切りついたらしく、現在は家族と一緒にいつものように泳いでいる姿が確認されているそうです。



一方、サザンレジデントのJポッドでもう1頭注目されている個体がいました。
J16sのJ50ちゃん(2014年生まれのメス)です。
J35さんがいるJ17sとは別の群れですが一緒に行動していてメディアの目が向けられました。

4歳のJ50ちゃんはこの先の生存が危ぶまれるほどガリガリに痩せていたのです。


健康なオルカのかたちをよく知っている人ならわかるかもしれませんが、写真で見るとブローホールの周辺がくぼみ「ピーナッツヘッド」と呼ばれる状態であることがわかります。

専門家たちは「周辺に餌を運ぶなど特別なケアをしないと死んでしまうのではないか」と考えています。

子供を産める年齢のメスの数が非常に限られており、生まれた子供もすぐに死んでしまう状態のサザンレジデントでまた幼いメスの個体の生命が危険な状態にあるのは非常に大きな問題です。
サザンレジデントは食料のキングサーモンが少ないだけでなく、非常に多くのウオッチング船やレジャーボートに囲まれやすい状況にありコールやエコロケーション機能をうまく使えない状態なのではないかと言われています。
カナダ漁業局では「この個体から最低500mの距離をとってください」とボートに呼びかけています。

J50ちゃんの問題については今後もツイッターなどで情報を更新していければと思います。


※サザンレジデントの個体識別カタログ2018年版は
https://www.whaleresearch.com(英語サイトです)
にアクセスし、CWR(Center for Whale Research)サポート会員として月額登録するとダウンロードできます。
最小額で月額5ドルからサポートできます。
支援したい方、興味がある方は登録してみてください。



また、オルカラボでもマンスリードネーションプログラムを行なっています!
http://a55lovestomoko.blog60.fc2.com/blog-entry-350.html
オルカラボをサポートしたい方、野生のオルカたちのために何かしたいけど何をすれば良いかわからない方は、よろしくお願いいたします。



さて!ノーザンレジデントの話題に戻りましょう。
昨夜から行方がわからなくなっており、東に行っていたのではないかと推測されていたA54sとA42s。
午前9時過ぎにイズミロック沖を東へと進んでいるのが発見されました。
黙ってうろうろしてたんかーい



午後になってポールとヘレナが帰ってきて、
そのまま潜れるスージー、ショーン、エマの3人がポールと一緒にCPの水中カメラのセッティングに行ってその間わたしはシフトのカバーに入って。


最終日だけどやはりなんだかんだとずっと忙しくラボにいました。
私はラボ2Fで生活していたためテントを畳む必要がないし、ラボでは普段からきっちり場所を決めて荷物を整頓して置いているので、パッキングは30分でできるほど超簡単なんですけどね。
CPの水中カメラは本日はセッティング完了できず翌日に持ち越しに。
ダイビング組も帰って来ました。


A30sとA42sは18時〜20時ころまでブラックニー・パスの入り口で食事。
そしてオルカラボの方にやってきました。


夕暮れの空の下、目の前に現れたオルカたちの姿は本当に美しいものでした。
18080301.jpg

18080304.jpg



あまりにもバタバタしていたので本日もメインハウスでのディナーはなし。
わたし、Pちゃん、ディランは暗闇の中キャンプキッチンで協力してディナーをつくりました。
(今シーズンはヘレナのディナーが数日に1回になってさみしかったですが、ヘレナの負担がかなり減ったようでそれはそれで良かったです)
ダイビング機材を片付けたショーンとスージーが来て、シフト前のスージーに「ダイビングお疲れ様」といってディランが作ったポテト炒めをちょっとあげました。


そして前日にシュノアが旅立ったため、彼女が入る予定だった夜シフトの午前2時~6時が誰もいないという話になりました。
ショーンが「やってあげたいけどわたしはあした朝6時からシフトなの…」
スージーが「わたしもやってあげたいけどこのあと午前2時までシフトなの…」というので
わたしとディランが「わたしがやる」「僕がやるよ」「じゃあ2時〜4時と4時〜6時、2時間ずつにわけよう」と口々に言っていると

「あなたたちは今日1日じゅうラボで仕事してたじゃないの!これ以上働く気?すこしは休んで人間らしくしたら?」
とショーンとスージーに言われたのですが、あす島を出てこの仕事からまた1年離れるリピーターの寂しさを察してくれたのか、Pちゃんが「もう黙ってふたりに夜シフトをやらせてあげましょう笑」と言ってくれました。



ショーンは朝早いので寝に行って、
スージーはシフトでラボに行って。

島を出る組は食料を使い切らなければいけないため、わたしはパプリカと玉ねぎとにんにく、ブラックオリーブ、フェタチーズ、サラミなどあらゆるものを切り刻んでスペイン風オムレツにぶちこみました。
結果、まったく味付けしていないのにレストランで食べるよりおいしいオムレツが完成しました。笑

盛り付け雑だけど本当においしかったんですよ
18080305.jpg


3人でディナーを食べながらひと息。
と、海のほうから



ブホッ、ブホオオッ



わたしたち「オルカだ………」

わたしは食事をわすれて即座にラボに走りました。
ラボ内で本を読んでいたシフト中のスージーに「オルカたちが戻ってきた!」と言ってデッキに出てもらい、レコーディングスタート。
ディランがわたしの食べ残した皿を持ってきてくれました。
「あの様子だとたぶんトモコはラボから戻ってこない」
と言って、Pちゃんと洗い物までしてくれたそうです。


わたしとスージーはラボでジョンストン海峡へ戻るA30sとA42sたちのブローを見送りました。


ディランも「明日島を出る組」なのに、わたしと同様に一日中他人のシフトのカバーでラボにいたせいでまだテントすら片付けることができておらず、キャンプキッチンでのディナーを終えた23時の時点でようやく荷造りをはじめテントをたたみにいっていました。
一緒に島を出るベン(超絶マイペース)はたぶん誰よりもはやく荷造りを終えてマップルームかどこかでさっさと寝ていたはずです。笑

わたしは荷造りには手間がかからないし、きのう寝たし、今夜どんなに寝られなくても明日以降は睡眠が保証されてるので気楽なもので「4時-6時のシフト楽しみだな〜、オルカたち鳴くといいな」とか思ってラボの2Fで横になりながらコールを聞いていました。


4時〜6時のシフトはこの光景だからすきです
18080302.jpg



今回オルカラボに来るのが本当に難しくて、
「せめて10日間だけでも行かないよりマシ」とこの日程にしたのですが
なんでこのタイミングで帰国にしたんでしょうね?
(もう1週間残っていればA34sに会えたのに…)


毎年夏オルカラボでのボランティアに通うため就職もできず、
日本でバイトを続けながらもう20年もカナダと日本を行ったり来たりしていますが
わたしのような「オルカの調査、特に鳴き声の聞き分け」しか能力がない日本人が、
オルカの調査のため、オルカと人間との未来のためにずっとカナダにいられる方法はないんでしょうか。
なんとかして方法を探し出さねば…。


この翌日わたしとディランとべンはこの島を出て、
その1週間ちょっと後にはアメリも島を出て、
入れかわりにまた数人リピーターを含むアシスタントたちがやってくる予定です。


我らがPちゃんは今回も9月末までいてくれます!!
ポールとヘレナがIWCで留守にしている間のラボの管理も任されているようでなんと責任重大…。
でも彼女はボートのライセンスを取得していますし、施設管理がずば抜けてできる人なので任せておいて安心ですね。
インスタグラム(@orcalab_japan)を頻繁に更新してくれていますのでチェックしてみてください。



今後もオルカたちでいっぱいで忙しい8月になることを祈りつつ、
わたしは今シーズンの残りは日本でオルカライブとexploreを楽しもうと思います。


今年は期間が短いうえに、
想像を絶するくらい慌ただしくて最初から更新もままならず、申しわけありませんでした。
いつもピーク時には更新が遅れている気がしますが
今年は最初からピークでした。


長年運営しているこのブログも期間が短くなったり、更新できなかったり、
去年は現地にすら行けなかったりでお休みが続いてしまい、
どれくらいの皆様がまだここを読んでくださっているのかわかりませんが


野生のオルカたちがいる限り、この先もできる限り長く続けたいと思っています。
また来年もよろしくお願いいたします。

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2018-08-14 : オルカ : コメント : 3 :
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Re: J35’s Baby
> J35の赤ちゃんには、名前というか
> 番号はついてましたか?もしわかれば教えてくださいm(__)m

Miranoさん、読んで下さってありがとうございます。
Center for whale reserchのページを確認しましたが現在のところ名前や番号がついているようすはありません。
ここ数年で生まれた中で現在も生きているJポッドの個体は同じJ17sのJ53(母・J17)、
その後に生まれたJ54(母J28)とJ55(母はJ14かJ37か不明)はしばらく生きましたが残念ながらすでに死んでしまっています。
J55と同時期に死産で発見された個体がいるようですが番号は割り当てられていないようです。
2018-08-21 13:26 : Tomoko(Orcalab Japan) URL : 編集
J35’s Baby
J35の赤ちゃんには、名前というか
番号はついてましたか?もしわかれば教えてくださいm(__)m
2018-08-16 01:10 : Mirano URL : 編集
J35さん
はじめまして。J35さんの情報ありがとうございます。ニュースその後が気になっていました。ボランティア活動頑張ってください!また記事の投稿を楽しみにしています。
2018-08-16 00:57 : Mirano URL : 編集
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プロフィール

Tomoko(Orcalab Japan)

Author:Tomoko(Orcalab Japan)
カナダ・BC州の海洋生物研究所「オルカラボ」で、野生オルカ(シャチ)の鳴き声の解析スタッフをしています。
夏の間は研究のためオルカラボのあるハンソン島に滞在。日本ではよくライブハウスにいます
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